産婦人科医に聞く更年期女性のホルモンと身体(後半)
更年期以降の女性は恋をしましょう
勝 10代女子ではないけれどセックスのことをオープンに語る文化は何歳になってもありませんね。
八田 適度なセックスは週2回以上で、男性の前立腺癌の予防にもなると言われています。そうは言っても、なかなか難しいと思うのですが。女性もやはり腟を使わないとどんどん萎縮して機能が落ちていきます。性交によりオキシトシンやセロトニンなどのハッピーホルモンも分泌されます。新しいパートナーのためにGSM治療を始められた60代の女性がいますが、キラキラして確実に若返っています。体が元気になると心も元気になりますね。人間本来の姿かなと思います。生きる本能。私は90歳を過ぎてもできると思っています。
勝 ええっ。
八田 ずっと続けていればできます。長年セックスレスで90歳でいきなりどうかしようとするのは無理ですが(笑)。性行為そのものでなくとも、抱きしめるとか、手を繋ぐとか、そういうコミュニケーションが大切です。幸せホルモンが出ますよ。ワンちゃん可愛いって抱きしめるでしょ。幸せホルモンでます。ペットもいいけれどやはり人は人と繋がってほしい。コミュニケーションは言葉と体、両方が必要なんです。最期まで元気でいる秘訣だと思います。
「90歳、骨になるまで女でいよう」今回の対談はこれです。
勝 なんと!
八田 やはり更年期以降の女性には、恋をしましょうと言いたいですね。色々と問題がでてくるかもしれないから譲って、恋心を持ちましょう、にしておきましょうか。
勝 推し活でもよいのですか?
八田 無いよりはよいけれど、やはり実際の生身の人間をおすすめします。脳にもよいでは。SNSなどで昔のカレシや様々なジャンルの方との出逢いも可能な時代になりました。
更年期以降の女性に言いたいのは、自分が生きていく人生で主人公は自分なんです。自分をいかにプロデュースするかは人のためじゃない。夫でもパートナーでもでも子供のためでもない。自分が幸せで元気にいるために何が必要かを考えてみてください。自己中心的に考えてもいいと思うのです。
勝 日本女性は我慢することが長年染み付いているから、なかなかそれを払拭できない。でもそうこうしているうちに人生終わってしまいますね。
八田 それは昭和で終わりです。令和を生きる女性はもっと自分に我儘で、自分中心でいいんじゃないかと思います。それまで妻として母として一所懸命やってきたんだから、これからは自分のためにやっていきましょうよって。今まで女性ホルモンで守られてたものがなくなって様々な病気が増えてくるのがこの世代。血圧が上がったり、動脈硬化が進んだり、心筋梗塞や脳梗塞、あと癌が増えてきます。不調は絶対にそのままにしておかないっていうことを心がけてください。
勝 先生なりの養生方はなんでしょうか。
八田 不調をそのままにしておかないことです。何か症状があって2週間経っても治らない時は、必ずその専門医にかかるようにしています。2週間はひとつの目安期間だと思っています。年にいちど検診しているから大丈夫ではありません。。若いときに比べてなかなか症状が治りづらいことはがあっても、2週間以上症状が続いたら専門のクリニックに行く。うちの父がそうでしたけどね。検診を受けていたにも関わらず、癌を見つけられませんでしたから。毎年受けている、何十万の高い検診良を払ってきちんと検診しているから大丈夫ではなく、その結果を過信することなく、いつも自分の体の声に耳を傾けるってことでしょうか。
勝 自分の体の違和感は自分が一番分かりますよね。その声を聞き逃さないことなんですね。
八田 自分の体の責任者は自分自身。体調の変化は誰にも分からないから、不調があったら絶対にそこを治すようにする。睡眠不足や食事がおろそかだったりするとすぐその結果が体に出るのが更年期以降ですよ。食べたものが半年後の自分を作るし、細胞はいつも入れ替わってるわけで、ストレスがあったらその積み重ねが病を招きます。一生懸命頑張った後はゆっくり休む。不調があるのは年のせいだからと放置しないことです。更年期の症状にも大きな病気がかくれていることもあります。多いのは疲れやすい、甲状腺疾患など。自己免疫疾患、女性に多い癌は大腸癌。頭痛が実は高血圧や脳腫瘍があるケースもあります。女性ホルモンの守りがなくなっているから、ちゃんと検診は受けて、その結果に甘んじないこと。自分の体の声を是非聞いてみてください。
勝 私たちの母親世代が完璧だったんです。完璧だったものですから、母ほど私はできていないっていうのが、どこかあって、真面目な人ほどそういうふうに思って、我慢するものと思っているし、弱音をはきにくい。更年期も経験して、母はどうだったのかと思いました。自分の不調は何も言っていませんでした。色々あったはずですが。でももっと身体の声を自分で大切にする声を聞くことが大切ということですね。
八田 何度もいうように、「自分が主人公」です。最後の主人公ですよ。お金もためこんでいないで美味しい食事をしましょう。楽しい人と食事をすること。食べることはすごく楽しいことで、最後に残されている欲は性欲より食欲の方が強いのでないかと思います。死ぬまで美味しく食べれて、どこも痛くなければハッピーだと思うんですよ。おいしく食べれる。おいしく食べて、眠るように死にたいなって思う。あれ、起きてこないねってそのままあの世へ行けたららいいんじゃないかなって笑、理想ですね。人に迷惑をかけないでこの世を去りたいです。健康寿命=平均寿命が理想的だと思うのです。いま女性はこの差が12年もあるのですが、更年期で体を見直して悪い生活習慣をリセットすれば、この期間を縮めることができるのではないかと思うのです。健康のまま長生きしましょう。
八田 真理子 (はった まりこ)先生プロフィール
1990年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業
1990年 順天堂大学産婦人科 研修医
1992年 千葉大学産婦人科 医員
1993年4月~1998年3月 松戸市立病院産婦人科 医長
1998年4月~ 聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田 院長 現在に至る
1975年9月に実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、地域に密着したクリニックとして、
思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事する。
女性のヘルスケアに関する相談会やセミナーへの登壇など通じて、性教育・不妊・更年期などの正しい知識の啓蒙にも積極的に取り組んでいる。
日本産科婦人科学会専門医
母体保護法指定医
日本女性医学学会専門医
日本抗加齢学会専門医
日本産科婦人科学会認定 ヘルスケアアドバイザー
日本医師会認定健康スポーツ医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本思春期学会 性教育認定講師
千葉県立松戸国際高等学校 学校医
松戸市立栗ヶ沢中学校 学校医
聖徳大学 兼任講師
日本マタニティフィットネス協会認定インストラクター
NPO法人 フィット・フォーマザー・ジャパン理事
2018年11月 恩賜財団母子愛育会会長賞
2019年11月 健やか親子21 厚生労働大臣賞受賞